DX戦略とは、デジタル技術を活用して競争優位性を確立するための計画です。本記事ではDX戦略に取り組むメリットと策定方法を紹介。策定方法は7つのステップに分け、各ステップで何をすればいいのか、具体的に解説します。
目次
1. DX戦略とは
DXとは、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、組織文化などを変革することです。これにより競争優位性を確立するための計画を立てることが、DX戦略です。
具体的には、顧客体験の向上、業務効率化、新規事業の創出、働き方改革など、企業の課題や目標に合わせて、デジタル技術をどのように活用していくのかを明確に定義します。
DX戦略は、単なるITシステムの導入やデジタル化とは異なります。DX戦略においてデジタル技術の活用は手段であり、その目的は企業全体の変革を推進し、持続的な成長を実現することです。そのため、全社的な視点に立った戦略策定が求められます。
2. DX戦略の必要性
DX戦略が必要とされている背景には、現代社会がVUCAと呼ばれる状態にあるからです。VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字です。
グローバル化やデジタル化の進展、新型コロナウイルスの感染拡大などにより、企業を取り巻く環境はかつてないほど変化しています。こうした変化に迅速に対応し、競争力を維持していくには、DX戦略に基づいた変革が不可欠です。
また、日本企業特有の課題として、少子高齢化による労働力不足やレガシーシステムなどが挙げられます。DX戦略を推進することで、これらの課題を克服し、持続的な成長を可能にする基盤を構築できます。
3. DX戦略に取り組むメリット
DX戦略に積極的に取り組むことで、企業はさまざまなメリットを享受できます。ここでは、主なメリットを4つ紹介します。
3-1. 業務効率と生産性の向上
DX戦略ではITツールを活用し、これまで手作業で行っていた業務を自動化したり、業務プロセスを短縮したりします。これにより、業務効率が大幅に向上します。
たとえばRPAを導入すれば、データ入力や集計といった定型業務を自動化できます。給与計算システムと勤怠管理システムを連携させることで、集計を自動化したり、確認作業を簡略化したりすることも可能です。
このような効率化の結果、従業員は売上や利益に直結する、より生産性の高い業務に集中できるようになります。
3-2. 既存事業の改善
DXは、既存事業の改善にも大きく貢献します。たとえば、ECサイトに顧客の購買履歴や行動データに基づいたレコメンド機能を導入することで、顧客一人ひとりに最適な商品を提案し、購買率向上につなげられます。
また、IoTを活用して製品の稼働状況をリアルタイムで把握し、故障予知やメンテナンスの効率化を図ることで、顧客に質の高いサービスを提供できます。
このような既存事業の改善は顧客満足度や解約率の改善につながり、その事業のLTVを向上させるでしょう。
3-3. 働き方改革の推進
DX戦略は、柔軟な働き方を実現するうえでも重要な役割を果たします。デジタル技術を活用し、テレワークやフレックスタイム制などの導入を促進することで、従業員のワークライフバランスを改善できます。これにより従業員エンゲージメントは向上し、生産性や定着率の改善につながります。
3-4. リスクの早期発見と脱却
DXを推進する過程では、さまざまなデータが蓄積され、分析できるようになります。これはリスクの早期発見に役立ちます。従来の方法では見過ごされてきたリスクも、データに基づいた分析によって浮き彫りになるでしょう。
たとえば、顧客の購買履歴やWebサイトのアクセス状況などを分析することで、これまで気づかなかった顧客の行動パターンやニーズの変化を把握できます。この分析結果から、将来的な売上減少や顧客離れといったリスクを予測し、事前に対策を講じることが可能になります。
さらに、データ分析はリスク回避策の改善にもつながります。過去の事例やデータに基づいて、より効果的なリスク対策を検討できるようになるため、リスク発生の可能性を最小限に抑えられます。
4. DX戦略の策定方法
DX戦略を成功させるためには、適切な策定手順を踏むことが重要です。ここでは、DX戦略を策定するためのステップを7つに分けて解説します。
STEP1.自社の理念やユニーク性を見直す
DX戦略を策定する最初のステップは、自社の理念やユニーク性を見直すことです。自社の理念やユニーク性を明確にすることで、DX推進の軸となる価値観を定められます。次のような根本的な問いについて、改めて検討してみましょう。
- そもそも、なぜ自社はこの事業を行っているのか?
- 顧客にどのような価値を提供しているのか?
- 競合他社との差別化ポイントは何か?
たとえば、顧客との長期的な関係構築を重視する企業であれば、顧客との接点を強化するデジタルツールを導入したり、パーソナライズされたサービスを提供するためのデータ分析基盤を構築したりといった戦略が考えられます。
STEP2.自社の現状を把握し課題を明確にする
自社の理念やユニーク性を確認したら、次は現状を把握し、DX推進における課題を明確にします。現状把握では、業務プロセスや組織体制、ITシステム、顧客との接点、データ活用状況など、多角的な視点から分析を行うことが重要です。
たとえば、業務プロセスにおいては、次のようなことについて洗い出します。
- どのような業務に時間がかかっているのか?
- 手作業が多く非効率な部分はどこか?
- 部署間で情報共有がスムーズに行われているか?
- 顧客対応は迅速かつ適切に行えているか?
課題を明確にすることで、DXによって解決すべき点が明確になり、より効果的な戦略を立案できます。
STEP3.外部環境を分析する
自社の課題を明確にしたら、次は外部環境を分析します。社会全体の動向や、業界特有のトレンド、競合他社の状況、最新のデジタル技術などを分析することで、自社を取り巻くビジネス環境を客観的に把握できます。
たとえば社会全体の動向としては、少子高齢化による労働力不足や消費者ニーズの多様化、環境問題への意識の高まり、グローバル化の加速などが挙げられます。
これらの外部環境の変化を踏まえ、自社のDX戦略にどのような影響を与えるのか、どのような機会や脅威があるのかを分析します。
STEP4.DX推進の目的とビジョンを決める
自社と外部環境の分析が完了したら、DX推進の目的とビジョンを明確に設定します。「DXを通じて、自社はどうなりたいのか?」「どのような未来を実現したいのか?」といった問いを立て、具体的な目標を設定することが重要です。
目標設定では、売上増加、コスト削減、顧客満足度向上など、数値で測れる定量的な目標をまずは立てましょう。これに加え、ブランドイメージ向上や従業員エンゲージメント向上など、数値化が難しい定性的な目標も設定することで、DXの成果を多角的に評価できます。
たとえば、「3年後に売上を20%向上させる」「顧客満足度を5ポイント向上させる」「従業員の離職率を10%削減する」といった具体的な目標を設定すると、DX推進のモチベーションを高め、効果的な施策を実行することにつながります。
STEP5.DX人材や必要なツールを確保する
DX戦略を実行に移すには、適切な人材とツールを確保することが不可欠です。
DX人材には、ITスキルだけでなく、ビジネス課題を理解し、解決策を提案できる能力が求められます。社内で育成する場合は研修制度を充実させる、外部から採用する場合は経験豊富な人材を獲得するなど、戦略的に人材を確保する必要があります。
必要なツールには、業務効率化のためのRPAツール、データ分析のためのAIツール、コミュニケーションツール、セキュリティ対策ツールなどがあります。これらのツールは、自社の課題や目的に合わせて適切に選択しましょう。
たとえば、顧客とのコミュニケーション強化を図る場合は、CRMツールやMAツールが有効です。これらを導入することで、顧客との接点を強化し、顧客満足度向上を図れます。
STEP6.施策を実行する
必要な人材とツールを確保したら、いよいよDX戦略に基づいた具体的な施策を実行します。
実行段階では、計画通りに進捗しているか、効果が出ているかを定期的にモニタリングすることが重要です。もし、計画とずれが生じている場合は、速やかに軌道修正しましょう。
また、DX推進には、社内全体の理解と協力が不可欠です。そのため、DXの目的や意義、進捗状況などを積極的に共有し、全社一丸となって取り組める体制を構築することが重要です。
たとえば、社内ポータルサイトやニュースレターなどを活用してDXに関する情報を発信したり、定期的に説明会やワークショップを開催したりすることで、従業員の意識改革を促進できます。
STEP7.定期的な見直しと改善をくり返す
DX戦略は、一度策定したら終わりではありません。ビジネス環境や技術革新は常に変化していくため、定期的に見直しと改善をくり返すことが重要です。
具体的には、設定したKPIの達成状況を定期的に確認し、目標達成に向けた進捗状況を把握します。もし、目標達成が困難な場合は、その原因を分析し、改善策を検討しなければなりません。
また、最新のデジタル技術や競合他社の動向を常に把握し、必要に応じて戦略に反映していくことも重要です。
たとえば、当初は想定していなかった新しい技術が登場した場合、その技術を導入することで、より効率的な業務プロセスを構築できるでしょう。
【まとめ】DX推進において緻密な戦略は重要だが、フットワークの軽さも重要
緻密な戦略を立てることはDX推進において非常に重要ですが、同時に「フットワークの軽さ」も忘れてはいけません。
DX推進は、常に変化に対応していく必要がある取り組みです。そのため、完璧な戦略を最初から目指すのではなく、まずは小さく始めて、試行錯誤をくり返しながら改善していくというアプローチが有効です。
そのために有効なのがスモールスタートです。たとえば今まで紙で送っていた請求書をPDFにしてメールで送る、勤怠管理システムと給与計算システムを連携させて計算や確認作業を自動化させる、といった取り組みから始めてみましょう。スモールスタートなら失敗のリスクも低く、施策の成果が得られるのも早いです。
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