建設DXとは?必要な理由や解決できる課題、国土交通省の取り組み、成功事例

建設DXとはドローンやIoT、AIなどのデジタル技術を活用し、建設業界の課題解決やビジネスモデルの変革を目指すことです。本記事では建設DXの必要性やメリット、国土交通省の取り組み、企業の成功事例をわかりやすく解説。建設業界のDX推進担当者や、DXに興味のある方はぜひご覧ください。

1. 建設DXとは

建設DXとは、AIやIoT、ドローンといったデジタル技術を活用し、建設業界の業務効率化や生産性向上、人材不足の解消などを目指す取り組みです。

一般的なDXと建設DXでは、重点を置く部分が異なります。

一般的なDXは、顧客体験の向上やビジネスモデルの変革というように、目的が広範囲にわたります。建設DXは、建設現場の安全性向上や施工管理の効率化など、より現場に特化した課題解決に重点を置きます。

1-1. 建設DXが必要な理由

建設業界は、深刻な人手不足や高齢化、それに伴う技術継承の難しさといった課題を抱えています。これらの課題解決には、デジタル技術の活用による業務効率化や生産性向上が不可欠です。また、建設業界の働き方改革を推進するためにも、建設DXは重要な役割を担っています。

2. 建設業界が抱える課題

建設業界は、人材不足、技術継承、生産性の低さ、働き方改革の遅れといったさまざまな課題を抱えています。これらの課題は、業界全体の成長を阻害する要因となっています。

2-1. 人材不足

建設業界では、深刻な人材不足が続いています。これは、少子高齢化や若者の建設業界離れなどが原因です。人材不足が続くと、工期の遅延や品質の低下につながりかねません。

2-2. 技術継承

高齢化が進む建設業界では、熟練技能者の持つ技術やノウハウを次世代に継承することが大きな課題となっています。技術継承が滞ると、高度な技術が必要な工事が難しくなってしまうでしょう。

2-3. 生産性の低さ

建設業界の生産性は、他の産業と比べて低い傾向にあります。これは、IT化の遅れや非効率な作業工程などが原因です。生産性の低さは、収益の減少や競争力の低下につながります。

2-4. 働き方改革の遅れ

長時間労働や休日出勤が常態化している建設業界では、働き方改革が遅れているといわれています。働き方改革が進まないと、人材の流出や企業イメージの悪化につながることが懸念されます。

3. 建設DXに取り組むメリット

建設DXは、建設業界のさまざまな課題を解決し、多くのメリットをもたらします。業務効率化やコスト削減、生産性向上など、企業の競争力を高めるための効果が期待できます。

3-1. 業務効率化

建設DXを導入することで、これまで担当者が行っていた書類作成やデータ入力、工程管理などの事務作業を自動化できます。その結果、担当者は現場の安全管理や顧客との打ち合わせなど、より重要な業務に集中できるようになり、業務全体の効率化が実現します。

これは、AIやRPAなどの技術を活用することで、これまで人手に頼っていた作業を自動化できるようになるためです。たとえば、AI-OCRを活用すれば、手書きの図面や書類を自動でデータ化でき、入力の手間を大幅に削減できます。また、RPAを活用すれば、定型的な事務作業を自動化し、ヒューマンエラーも防げます。

3-2. コスト削減

建設DXの導入によって、人件費や材料費、燃料費などのコストを削減できます。たとえば、これまで複数人で対応していた事務作業を自動化することで、人件費を削減できます。ICT建機を導入することで燃料の消費量を抑え、燃料費を削減することも可能です。

コスト削減が可能になる理由は、業務の効率化や自動化による人材の最適化、そして資源の無駄を減らせることにあります。

たとえばICT建機は、熟練オペレーターの操作を学習し自動で最適な動きをするため、燃料消費量の削減につながります。また、ドローンを活用した測量では、従来の測量に比べて人手を減らし、作業時間を短縮することで人件費を削減できます。

3-3. 生産性向上

建設DXによって、作業の効率と正確性が向上し、生産性を向上させられます。たとえば、BIM/CIMを導入することで、設計図面を3Dモデルで作成し、施工前に建物の完成イメージを共有できます。これにより、設計段階でのミスや手戻りを減らし、施工の精度を高められます。

生産性向上が見込まれるのは、情報共有の促進、作業の可視化、そして、工程の標準化などが実現するためです。

たとえば、情報共有プラットフォームを導入することで、関係者間でリアルタイムに情報共有を行い、スムーズな意思決定を促進できます。また、IoTセンサーで取得したデータを分析することで、作業の進捗状況を可視化し、ボトルネックの発見や改善に役立てられます。

3-4. 働き方改革の推進

建設DXは、長時間労働が課題となっている建設業界において、働き方改革を推進します。たとえば、現場の作業進捗を遠隔で確認できるシステムを導入すれば、現場に出向く回数を減らし、移動時間の削減につながります。その結果、労働時間の短縮や、オフィスでの業務時間の増加によるワークライフバランスの改善が期待できます。

働き方改革を推進できる理由は、建設DXによって場所や時間に捉われない柔軟な働き方が可能になるためです。

たとえば、クラウドを活用した情報共有システムを導入すれば、現場にいなくても必要な情報にアクセスできます。また、Web会議システムの導入によって移動時間を削減し、会議の効率化を図ることも可能です。

3-5. 安全性向上

建設現場では高所作業や重機操作などがあり、常に危険と隣り合わせです。建設DXを導入することで、これらのリスクを軽減し、現場の安全性を向上させられます。

たとえば、ドローンを活用して高所の点検作業を行うことで、作業員の転落リスクを減らせます。また、VRを使った安全教育シミュレーションを実施することで、作業員は事前に危険を体験し、安全意識を高められます。

安全性向上が期待できるのは、危険作業の自動化や遠隔操作、そして、作業員の安全意識向上につながるシステムを導入できるためです。たとえばウェアラブルデバイスを着用することで、作業員のバイタルデータをリアルタイムで監視できます。体調不良や疲労を検知することで、事故を未然に防げるでしょう。

3-6. 技術継承の促進

建設業界では、熟練技能者の高齢化に伴い、長年培われてきた技術やノウハウをどのように継承していくかが課題となっています。

建設DXを活用すれば、これらの技術をデジタル化し、若手や次世代に効率的に伝えられます。たとえば、熟練技能者の作業を動画で記録し、データベース化することで、いつでも誰でも簡単にアクセスして学べます。

技術継承を促進できるのは、暗黙知を形式知に変換し、共有・蓄積できるようになるためです。

たとえばVR技術を活用すれば、熟練技能者の視点で作業を疑似体験できるため、より効果的に技術を習得できます。また、AR技術を活用すれば、作業中に必要な情報をリアルタイムで表示させられ、作業の効率化と品質向上に貢献します。

4. 建設DXに関する国土交通省の取り組み

国土交通省は、建設業界の生産性向上と働き方改革を推進するため、建設DXを積極的に推進しています。

4-1. i-Construction

i-Constructionとは、ICT技術を活用して建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みです。具体的には、測量・設計・施工・検査の各プロセスにおいて、3次元データを活用することで、業務の効率化や品質向上を目指しています。

4-2. BIM/CIM原則適⽤

BIM/CIMとは、コンピューター上に作成した3次元モデルに、コストや工程などの属性情報を付加したものです。国土交通省は、2023年度までに小規模なものを除くすべての公共工事において、BIM/CIMの活用を原則化することを目指しています。

5. 建設DXで活用される技術

建設DXでは、さまざまなデジタル技術が活用されています。それぞれの技術が持つ特徴を理解し、適切に活用することで、建設業界の課題解決に大きく貢献できます。

5-1. AI(人工知能)

AIは、画像認識やデータ分析など、さまざまな分野で活用されています。建設業界では、ドローンで撮影した画像をAIで解析することで、構造物の劣化状況を自動的に検出できます。

5-2. IoT

IoTは、さまざまな機器をインターネットに接続し、データの収集や分析を行う技術です。建設業界では、建設機械にセンサーを取り付けることで、稼働状況や位置情報をリアルタイムに把握できます。

5-3. ドローン

ドローンは空から高画質の画像や動画を撮影できるため、建設現場の測量や点検に活用されています。従来の測量に比べて、大幅な時間短縮とコスト削減が可能になります。

5-4. クラウド

クラウドは、インターネットを通じてデータの保存や共有を行えるサービスです。建設業界では、設計図面や施工状況などの情報をクラウド上で共有することで、関係者間の情報共有をスムーズに行えます。

5-5. 5G

5Gは、高速・大容量通信を可能にする次世代の通信規格です。建設現場では、5Gを活用することで、大容量のデータの送受信や、リアルタイムでの遠隔操作が可能になります。

5-6. AR/VR/MR

AR/VR/MRは、現実世界に仮想空間を重ね合わせることで、より直感的な情報伝達を可能にする技術です。建設業界では、設計段階で建物の完成イメージを立体的に確認したり、作業手順をシミュレーションしたりする際に活用されています。

5-7. 3Dプリンター

3Dプリンターは、デジタルデータをもとに立体物を造形する技術です。建設業界では、建築模型や部材の製作に活用されています。将来的には、建物を丸ごと3Dプリンターで造形することも期待されています。

5-8. ICT建機

ICT建機は、GPSやセンサーなどの技術を搭載した建設機械です。自動制御や遠隔操作が可能になるため、作業の効率化や安全性の向上が期待できます。

5-9. 無人建機

無人建機は、AIや自律走行技術を搭載した建設機械です。オペレーターなしで自動的に作業を行えるため、人手不足の解消や危険作業の自動化に貢献します。

6. 建設DXの成功事例

ここでは、建設DXに積極的に取り組んでいる企業の成功事例を紹介します。

6-1. 大林組のDX推進事例

大林組は、建設業界における顧客ニーズの多様化や技能伝承、労働時間規制に対応するため、NECと連携し「建設PLMシステム」を構築しました。

このシステムは、設計から施工、アフターサービスまでの建築物の構成情報を一元管理するもので、BIMを起点に情報を統合することで、データの整合性を確保し、業務の迅速化・高度化を図ります。

これまで部門やシステムごとに管理され、活用が困難だった建築物の構成情報を一元管理することで、業務プロセス全体で情報を共有し、効率的な運用を可能にする狙いです。

参考:大林組、NECと連携し、DX戦略の中核として設計から施工、アフターサービスまでの情報を一元管理する「建設PLMシステム」を構築 | ニュース | 大林組

6-2. 清水建設のDX推進事例

清水建設は、ビル運用管理の生産性向上と付加価値向上のため、建物OS「DX-Core」を開発しました。

これは、建物内の各種設備機器をローコードで連携させ、新しいサービスを生み出す次世代デジタルプラットフォームです。

従来は設備機器ごとにプログラミングや配線が必要でしたが、DX-Coreを導入することでアプリケーションを追加するだけでビル機能をアップデートできます。

これにより、ロボット連携による自動ドアの開錠やエレベーターの呼び出し、監視カメラ映像のリアルタイム分析による混雑状況の確認など、多様なサービス提供が可能になりました。

また、エッジとクラウドのハイブリッド構成により、停電時や火災時などでも安定した運用を実現しています。

参考:建物OS「DX-Core」/情報ソリューション/シミズのエンジニアリング

【まとめ】建設DXはできることから少しずつ始めよう

建設DXは、建設業界の未来を大きく変える可能性を秘めています。しかし、いざ建設DXを始めようと思っても、どこから手をつければいいのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

まずは、自社の課題やニーズを把握し、解決できそうな分野から取り組んでみましょう。たとえば、情報共有の効率化に課題を感じているなら、クラウドサービスの導入から検討してみるのも良いでしょう。あるいは、人手不足に悩んでいるなら、ICT建機の導入を検討してみるのも良いかもしれません。

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