DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や発祥、関連用語

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か、本来の意味や日本における意味、関連用語について解説します。DXと聞くと難しく考えがちですが、意外と身近なものです。Amazonで買い物をしたりVODサービスで映像コンテンツを観たりすることも、DXの一環です。このような身近な例を用いて、DXについてわかりやすく解説します。

1. DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、IT技術を駆使してビジネスのプロセスやモデルを変革することです。企業の組織、ビジネスモデル、商品、サービスなどを抜本的に変革し、新たな価値を創造することで、競争優位性を確立します。

従来のIT化は、業務効率化やコスト削減といった限定的な目的でデジタル技術を導入してきました。これに対してDXは、デジタル技術をより広範囲に活用します。これにより、顧客体験の向上や新たなビジネスモデルの創出など、企業の成長を促すことが目的です。

1-1. 経済産業省が推奨する、日本におけるDX

経済産業省は、2018年に「DX推進ガイドライン」を策定し、日本企業におけるDX推進を支援しています。

このガイドラインでは、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

日本は、少子高齢化や人口減少といった社会課題を抱えており、これらの課題解決には、DXによる生産性向上や新たなビジネス創出が不可欠です。経済産業省は、DX推進によって、日本経済の活性化と持続的な成長を目指しています。

2. DXと似た言葉の意味と違い

DXと混同しやすい言葉として、「デジタル化」と「IT化」があります。これらの言葉は、DXを構成する要素の一部ではありますが、DXとは異なる概念です。それぞれの意味合いとDXとの違いを明確に理解しておきましょう。

2-1. デジタル化

デジタル化とは、アナログデータをデジタルデータに変換することです。たとえば、紙の書類をスキャナーで読み取ってPDFにする、音楽をCDからMP3に変換する、といった作業がデジタル化に該当します。デジタル化によって、データの保存、共有、検索などが容易になり、業務効率化につながります。

【DXとの違い】

デジタル化はあくまでデータ形式の変換であり、業務プロセスやビジネスモデルそのものを変革するDXとは異なります。DXは、デジタル技術を活用して、顧客に新たな価値を提供したり、競争優位性を築いたりすることを目的としています。

2-2. IT化

IT化とは、業務プロセスにIT技術を導入し、効率化や自動化を図ることです。たとえば、顧客管理にデータベースシステムを利用する、給与計算システムと勤怠管理システムを連携させて集計を自動化する、といったことがIT化に当たります。IT化によって、業務のスピードアップやコスト削減、ミスの削減などが期待できます。

【DXとの違い】

IT化は既存の業務プロセスを効率化するものであり、ビジネスモデルそのものを変革するDXとは異なります。DXは顧客体験の向上や新たなビジネスモデルの創出など、より大きな目標を達成することを目指しています。

DXを推進するためには、デジタル化やIT化といった基盤が不可欠ですが、それだけでは十分ではありません。DXを推進するための手段として、まずはデジタル化やIT化を進めるといいでしょう。

3. DXの関連用語

DXを推進するうえで理解しておきたい関連用語を解説します。これらの用語は、DXの概念をより深く理解し、実践していくうえで重要な役割を果たします。

3-1. 2025年の崖

2025年の崖とは、経済産業省が発表した「DXレポート」で提唱された概念です。多くの日本企業が抱えるレガシーシステムが、2025年以降、深刻なリスクをもたらす可能性を指しています。

具体的には、老朽化したシステムの維持管理コストの増大、システムの複雑化によるブラックボックス化、セキュリティリスクの増大、データ活用や新規ビジネスへの対応の遅れなどが挙げられます。

これらの問題が複合的に発生することで、企業の競争力低下や経済損失につながる可能性が危惧されています。

3-2. AI

AI(人工知能)は、人間の知的な活動を模倣する技術です。DXにおいて、AI活用は重要です。業務の自動化やデータ分析、顧客対応のパーソナライズ化など、さまざまな分野で革新的な変化をもたらすことが期待されています。

たとえば、AIを搭載したチャットボットによる顧客対応の自動化、AIによる需要予測に基づいた在庫管理の最適化、AIによる画像認識技術を活用した製品の品質検査などが挙げられます。

3-3. IoT

IoT(Internet of Things)は、さまざまなモノをインターネットに接続し、データの収集・分析・活用を行うことです。膨大なデータを集めて分析することで、新たなニーズを発見し、それを満たす新たな価値を創造できます。

DXにおいて、IoTの活用は重要です。製造現場の効率化、製品の稼働状況の監視、顧客への新たなサービス提供など、さまざまな分野でイノベーションを起こすことが期待されています。

たとえば、工場の生産設備をIoT化すれば、稼働状況をリアルタイムに把握し、故障予知や生産効率の向上につなげられます。製品にセンサーを搭載し、利用状況を収集・分析することで、顧客のニーズに合わせた製品開発やサービス提供を行うことが可能です。

3-4. クラウド・SaaS

クラウドとは、インターネットを通じて、サーバー、ストレージ、ソフトウェアなどのITリソースを必要な時に必要なだけ利用できるサービスです。SaaS(Software as a Service)は、クラウド上で提供されるソフトウェアサービスです。

DXにおいては、クラウド・SaaSを活用することで、ITインフラの構築・運用コストを削減できます。また、場所や時間に縛られずに業務を行えるようになり、ビジネスのスピード感を高められます。

3-5. DX人材

DX人材とは、DXを推進するために必要な知識、スキル、マインドセットを備えた人材です。具体的には、IT技術に関する知識、データ分析力、ビジネスモデルを構想する力、変化に柔軟に対応できるマインドなどが求められます。

DXを成功させるためには、DX人材の育成が不可欠です。企業は、研修制度の導入や人材交流など、さまざまな取り組みを通じてDX人材の確保・育成に力を入れています。

3-6. システムのブラックボックス化

システムのブラックボックス化とは、システムの内部構造や動作原理が複雑化し、開発者や担当者以外には理解できない状態になることです。

ブラックボックス化は、システムの改修や保守を困難にし、セキュリティリスクを高める要因となります。DXを推進するうえでは、システムのブラックボックス化を解消し、柔軟性・拡張性の高いシステムを構築することが重要です。

3-7. DXの発祥

DXという概念が初めて提唱されたのは、2004年のことです。スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が、論文の中で「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と述べたのが始まりです。

ストルターマン教授は、DXを「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という概念として捉えていました。しかし、今日のビジネスシーンにおいては、企業が競争力を維持し、成長していくための重要な戦略として認識されています。

4. Amazonに学ぶわかりやすいDX

Amazonは、DXを推進することで、世界有数の企業へと成長を遂げました。ここでは、Amazonのサービスを通して、DXがどのように私たちの生活を変え、新たな価値を創造しているのかを見ていきましょう。

4-1. 買い物のDX

Amazonは、ECサイトのパイオニアとして、オンラインショッピングを身近なものにしました。従来の買い物では、店舗に出向く必要がありましたが、Amazonを利用すれば、いつでもどこでも商品を購入できます。

さらに、Amazonは顧客体験を向上させるためのさまざまなサービスを提供しています。たとえば顧客の購買履歴や嗜好に基づいた商品レコメンド機能や、レビュー機能などです。

これらの機能・サービスは私たちの買い物体験を大きく変えました。デジタル技術により、買い物というプロセスが変革された一例です。

4-2. VOD(ビデオオンデマンド)によるDX

Amazonプライム・ビデオは、インターネットを通じて、映画やドラマなどの動画コンテンツを視聴できるVODサービスです。従来のように、レンタルビデオ店に出向いたり、テレビの放送時間に合わせたりする必要がなく、好きな時に好きなコンテンツを楽しめます。

VODはAmazonが最初に始めたサービスではありませんが、サービス開始は2006年と、VOD黎明期からサービスを提供しています。また、AmazonはAmazonプライム・ビデオやAbemaなどのVODサービスをテレビで視聴するためのデバイス・FireTVも提供。ネットショッピングだけでなく、VODサービスにも積極的です。

4-3. AWSによるDX

AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。企業は、AWSを利用することで、自社でサーバーやネットワークなどのITインフラを構築・運用する必要がなくなり、コスト削減や業務効率化を実現できます。

AWSは、スタートアップから大企業まで、幅広い企業に利用されており、ビジネスの成長を支えています。AWSは企業のビジネスプロセスやビジネスモデルを変革するために不可欠なサービスになりつつあるといえるでしょう。

まとめ. DXは意外と身近なもの

ここまで、DXの概念や事例、関連用語などを詳しく解説してきました。一見難しそうに思えるDXですが、実は私たちの身近なところでも、すでに多くの変化が起こっています。

たとえば、スマートフォンで電車のチケットを購入したり、オンラインで診察を受けたり、お店でセルフレジを利用したりするのも、DXの一環といえるでしょう。

DXは、企業だけでなく、個人の生活にも深く関わってきています。デジタル技術の進化によって、より便利で豊かな社会が実現していきます。DXへの理解を深め、その変化を積極的に受け入れていくことが重要です。

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